犬村 湾という男 (8/9)

鷲宮side。


犬村「ここまで見送ればわかるだろう。わざわざご苦労だったな」


鷲宮「おう。私も営業課に移動したいなぁ~・・・・なんつって」


犬村「ふん。アホな事を言ってないでさっさと戻れ。だが....前方には気を付けろよ?」


鷲宮「・・・・は?何で?」


犬村は耳と尻尾をパタパタさせながらドヤ顔で答えた。



犬村「犬も歩けば棒に当たる....ってな!」


鷲宮「お前が言うと説得力ハンパねぇな




こうして。


私は営業課に別れを告げ、口うるさい笠井が待つクレーム処理課へと帰るハズ......だったのだが.....。



私は



「あああああああああ!!俺っち本当に死んだ方がいいなぁぁぁぁ!!」



例のアイツと再び遭遇する事となる。


そう。営業課へ行く前に出会った”下半身だけスウェット男”だ。

相変わらず号泣しながら壁に頭を打ち付けていた。


鷲宮「・・・・また会ったわね。まだウロウロしてたの?」


「わ、鷲宮さあああああああああん!!どうじよゔ!!俺っち最大級のミスしちゃったああああああ!しかも2つ!」


何だろう。


とりあえずこの男は声が異様にデカい。


鷲宮「ミス....?ってかアンタねぇ、さっきも聞いたけど何で私の名前を.....」



「まず一つ!!」



おいコラ。私の話は完全に無視か。



大釜さんと合流できなかったああああ!怒られるううううう!!」


鷲宮「・・・・?大釜....さん?誰よソイツ」



「二つ目!!」



だから無視かよ。私の話は。




”DPP”の資料無くしちゃったあああああああ!!めちゃくちゃ大事な資料なのにいいい!!」



鷲宮「・・・・・・・・DPP?」



DPPって何だろう.....。


何かの暗号か.....?


鷲宮「って言うか、アンタは一体全体どこの誰なのよ」



「はぁぁ.....大釜さんに何て謝ろう。俺っち殴られるのだけは勘弁だわぁ」


そう言いながら、相変わらず私の質問を無視しトボトボと歩いていくその男。



鷲宮「あ、ちょ.....。待っーーーーーーーーーー」



角を曲がったその男に続き

数秒遅れて私も曲がってみると.....




鷲宮「あ......れ......?」





そこには



誰もいない通路が広がっているだけだった。