犬村 湾という男 (6/9)
大釜「ふぁ....あぁ、眠い。眠すぎて目が開かんな。困った困った.....おや?君は?」
笠井「誰かも知らずに暴言吐いたの!?」
大釜というその少女は、トロンとした力の無い瞳で暫く笠井を見つめていた。
大釜「・・・・んん?あぁ、君はアレか。クレーム処理課の笠井か....」
笠井「は?な、何で俺の名前.....」
大釜「知ってるさ。君も、鷲宮の事も」
笠井「・・・・・・・・?お、おい....お前一体.....」
大釜「鷲宮はしっかりやってるか?問題児枠で入ったから上手く順応してるか気になっていたんだ」
笠井「・・・・・・・・・・・・」
何なんだ....この子。
どうして俺や鷲宮の事を.....しかも問題児枠の事まで....。
この会社の関係者.....なのか?
大釜「ふぁ....何だその顔は。色々と聞きたそうな顔だな。だが.....”まだ”教えるワケにはいかん...」
ま、いつか嫌でもわかるさ。
笠井「大釜 洲夜とか言ったな....。お前、どこの課だ?もっと上の役職か?答えろ!」
その問いに大釜は相変わらずダルそうに答える。
大釜「悪いな....本当なら規則で他の課の者と接触する事は禁じられているんだ。・・・・だが、鷲宮の指導係だからなぁ。興味を惹かれてしまったよ」
笠井「鷲宮?鷲宮が何か関係あるのか?」
大釜「だから言っただろう?いつか嫌でもわかる、と」
大釜はユックリと荷物を抱えると
ピンクのドットを揺らしながらフラフラと歩き出した。
笠井「ちょ....おい!待てよ!まだ.....」
大釜「あぁ、そうだ。本当はここで仲間と合流する予定だったんだがどうやらソイツが迷ってしまった様でな」
笠井「・・・・・・・・あ?何の話だ?」
大釜「上がスーツ、下がスウェットの奇妙な格好の男を見かけたら伝えておいてくれ。”大釜 洲夜はもう帰った”と」
そう言い残し
謎のパジャマ少女は姿を消した。
なぜだろう。
俺は、その少女に深く関わるべきではないと、強く思ったのだった。