推理~探偵~ (1/13)



午前9時



カーテンを締め切った薄暗い事務所で俺の顔は携帯画面に照らされる。



モバスペって言うサイトの小説を読んでいるところだ。



タイトルは

『推理短編集』

なんともありきたりな名前で、内容も薄い。


俺ならこれくらいの推理一瞬だっての。



そんなことを思いつつも最新の更新まで読み進める。

それ程暇なんだ、探偵って。



他の探偵は知らないが、俺はそう。


収入も不安定だし、仕事だってアニメや小説とは全然違う。


殺人事件なんて関わらないよ、普通。


迷い犬を探したりとか浮気調査とかそんなものばかり。


最近はばあさんが道を聞きに来た。


ここは交番じゃないっての。




読んでいた小説をブックマークした俺はカーテンを開ける。


日差しは不健康な俺の体を強く射す。



事務所での仕事ってのも楽じゃない。


運動してないとやっぱり体はなまるもんだ。



どれ、久しぶりに空手の型でもやってみるか。



キャスター式の椅子にスーツを脱いでかけると精神統一を始める。



正拳、上段蹴り、そこからの回し蹴りへのコンビネーション的な流れ。



空手なんて高校生以来だ。

よく三十路越えても覚えてたなぁ。


ああ、楽し。



さぁ、ラストは正拳で締めだ、



俺は事務所入口前まで思い切り踏み込む。





事務所の扉が開くのにも気付かずに。




ガチャ



「せいっっ!!」



見事にみぞおちに拳を受けて倒れたのはお客だった。





「あ……、どうも…いらっしゃいませ。」