胎児のゆくえ (8/10)
「私は悲しい気持ちが半分。不謹慎だけど、嬉しい気持ちも半分」
万里子は眉間に寄せていたシワを解き、安心した表情でそう言った。
「万里子がそういうなら、良かった」
私と万里子は微笑みを交わした。
そして席を立った。
置いてけぼりにされたみのりが喚き出す前に、私は声を上げた。
「よし、甘いもの食べに行こう!」
「え~!あたしカラオケが良い」
と、みのり。
「両方行けば良いんじゃない?」
クスクス笑いながら万里子が提案する。
「賛成!プリクラも撮ろ!」
わいわいと喫茶店を出た。
みのりが加わって騒がしいのは確かだけど、楽しいと思えた。
これは帰りが遅くなりそう……
そういえば、今まで連絡とか入れてなかったなあ。
私はスマホを取り出し、母にメールした。
『今から万里子とみのりとカラオケいってきます!8時には帰るから!』
すぐに『連絡ありがとう。楽しんでおいでね』という返信が来た。
自然と頬が緩むのを隠しながら、スマホをカバンに仕舞う。
「琴音、遅い」
「みのりが早過ぎるんだけど?」
「仲良いんだね2人とも」
私たちは笑った。
それは幸せな産声となり、私の耳に響いた。
ー完ー