涙の退院 (5/5)
「やよっち、謝らないといけないことがあるの」
抱きしめ合ったままで、なっちゃんは突然懺悔を始める。
「えっ?謝らないといけないこと?」
「うん……やよっちがせっかく勉強教えてくれたのに……ううっ……」
「勉強?いいのよ、それが仕事だからさ」
嗚咽を漏らす彼女の背中をさすってやる。
しかし、なっちゃんは首を振る。
「それに……あたし……急に学校辞めちゃったし……!」
「もういいのよ、気にしないで……っ。私も、あなたを守りきれなかった……」
「やよっち、しかもっ、あたし……先生になれなかった……っ!」
“あたしさー……先生になりたいな”
“えっ?”
“やよっち見てたら先生っていいなーって”
4年前の記憶が昨日の事のように蘇る。
涙で視界が全てぼやけた。
「いいのよ、なっちゃん!」
私は涙で声が震えるのもお構いなしに、ここが病院だという事を忘れて叫んだ。
「あなたがっ……元気で生きててくれたらっ、それでいいの……っ!」
「ううっ…やよっち、ありがとおっ……!」
うええん、と2人して周りを憚らず、声を上げて泣いた。
こんなに涙が流れることを知らなかった……
いや、忘れていたんだね……
____________こんなに大切なものを。