この筋書きの結末 (31/31)
「それは……今はお答えできません」
大貫は断言した。
「そうですか、それは仕方がありませんね。私もあの子の事が知りたいのです……」
佐和子は肩を落とした。
しかし、大貫の意思に変わりはない。
事件のことを話すわけにはいかない。
「先ほどの話の続きですが、ゆきさんは、息子さんの養子だったということですか?」
「恐らく、としかお答えできません。順を追ってお話ししましょう。まず明白なのは、昔から息子はある事にお金を注ぎ込んでいたということです」
佐和子はソファーにもたれると、腕を組み、目を閉じた。
呆れた様子だ。
大貫は黙っていたが、彼女は話の続きを始めた。
「刑事さんなら、もうおわかりでしょう。女です。女に金を入れ込んでいたのです。風俗嬢。全く呆れたものです」
理解できない、という風に彼女は首を左右に振った。
その後、詳しい話を聞かせてくれた。
彼女の話を要約するとこうだ。
佐和子の息子は風俗嬢に金を入れ込んでいた。
そしてその嬢を大金と引き換えに、自分のものにした。
金を持て余した大人の男が気に入った嬢を自分の嫁にする。
これだけなら、よくある話だ。
問題は彼の趣向だったわけだ。
自分よりはるかに幼い娘に欲望を満たされるタイプの人間だった。
それが甘橋ゆきがこの家に養子として籍を置いている経緯だった。
「それで今、息子さんはどちらに……?」
予感を抱きながら尋ねると、予想通りの答えが返ってきた。
「今は……行方知れずです。3年前に大金と、ゆきを残して姿を消しました」
大貫は隣でくたびれている青野に目をやった。
青野は頷いた。
佐和子の息子の行方は見当も付かない。
しかし、重要なキーワードがある。
風俗______。
ヨシキと甘橋ゆきの共通点を見つけた。
2人はそこで知り合った____________
ここまで突き止めたんだ。
必ず捕まえなければ。
……結末は、もうすぐそこだ。