金 麗 (33/62)
「どうぞお乗りくださぁい」
と観覧車のお姉さんが私達に言うけれど
あの人の目は翔に釘付けだ。
でれ~っとした目をして
口角が上がりっぱなしで
完全に一目惚れしている。
私は堂々と翔の腕をつかみ、観覧車に乗る。
後ろからお姉さんの 冷たい視線を感じる
無視。
田中くんと藤田くんはもちろん
次の車両に乗ってくれた。
やっと翔と二人きりになれたのだ。
「…なんか照れるね」
翔がそう呟いた。
本当に照れているようだ。
翔は照れると目を逸らして遠くの景色を見つめながら手を摩りだすから。
「俺、ちゃんと麗のこと幸せにしてやるからな。今は辛いと思うけど、絶対迎えに行くから」
ベタな台詞なのに
今の状況だと、身に沁みた。
「ありがと翔…」
私は翔の手を握る。
「この傷、バスケで?」
翔の手には傷があった。
「そーなんだよ、橋本も気付いてくれないのにやっぱり麗は流石だな、
これこないだのバスケの試合でさー」
そんなことを話しているうちに、
観覧車はてっぺん。