0013 品川 ゼロ (40/103)
少年は口を半分開けて、呆然と僕を見ています。
僕がやすやすとOKして、一緒にその父親を倒した相手を探すと、どれだけ思い込んでいたのでしょうか。
悪いけど、そんなに世の中すんなり思い通りにはいかないよ。
色々考えましたが、僕も もう深く考えるのはよそうと思いました。
「もう行くよ お母さん心配してるよ ちゃんと家に帰りなね」
僕はそう言って芝生から立ち上がり、土手を登って自転車に乗ろうとしました。
「待って!」
すると少年も立ち上がり、大きめな声で僕を呼び止めてきました。
「パパ 最後何か言ってなかった?」
「あ」
負けた ちくしょう 仇をうってくれ
「うまく聞き取れなかったから 分からなかった」
僕は嘘をつきました。これ以上、少年と関わるきっかけを話したくありません。
「誰かの名前 言ってなかった?」
名前?
「名前は言ってなかったなあ」
そう答えた直後に、思い出しました。
「あ 名前かどうかは分からないけど ひゅうほう ひゅうほうって言ってた」
少年はそれを聞くと「そう」とだけ言いました。