0003 杉並 ルシエ (15/32)
確かに、メールのやりとりで隣町に住んでいると聞いていた。このスーパーはその隣町だ。
近いからまた会う可能性を懸念していたけど、反面どこか違う地域に逃げているとも思った。まさか逃げもせずに、家から自転車で15分の、こんな身近にいたなんて。
気付かれないように買い物を済ませ、あいつが店を出た後も後を着ける。
単純に怖いし、喉が渇くほどの緊張を感じた。自分でも何がしたいのか分からなかったけどさ、今を逃したら、次はいつになるか分からない。
あいつはスーパーから、2分程度のアパートに入って行った。
あたしはアパートの郵便受けを見る。たしか名前は。
203号 目黒 という表札が目に止まった。
これだ。目黒 マサカズ。
あたしをレイプした男の名前は目黒 マサカズ。
特売品のマヨネーズを買いに隣町のスーパーに来ただけで、偶然自分をレイプした犯人の家を突き止めたんだ。
家が。家が分かった。
どうしよう。どうしてくれよう。
あたしは気が狂いそうなほど興奮しながら、アパートを離れ、歩きながら目黒マサカズを苦しめる様々な妄想をする。
そして不意に、クローゼットの中に放置したSCMを思い出した。