0011 中央 アタル (75/142)
数分して、俺はやっとハンドルに頭を打ち付けるのを止めた。
足立シヲリは助手席に戻り、携帯をイジッている。
「ハア ハア」
しばらくの間、車内は男の荒い息だけになった。
俺がハンドルにオデコを着けたままでいると、突然ドアが開く音が聞こえる。
足立シヲリが車から出たらしい。
次に、後部座席のドアを開ける音が聞こえた。
足立シヲリが後ろの座席で何かしているようだが、俺はただボーッとハンドルに刻まれた車の会社のエンブレムを見ていた。
よだれが垂れそうになるほど、何もする気が起きない。
そしてすぐに、足立シヲリの声が聞こえる。
「中央さん この人 SCMを着けてます」
「あ は?」
一瞬意味が分からなかったが、俺はハンドルから頭を離し、ゆっくりと後ろを見た。
足立シヲリは男の口を指で開けて、こっちを見ている。
そしてもう1度俺に言う。
「着けてます SCM この人」
俺はすぐに車から降り、足立シヲリの立ち位置に行き、男の口の中に指を突っ込んだ。