0003 杉並 ルシエ (7/32)

机の上に置いたままの鏡の先には、見慣れた自分の顔。


童顔で、肩まで髪を伸ばした事無くて身長も低いけど、眉が濃くて目つきが悪くてさ。


小さな頃に親から「高くなれ高くなれ」って鼻を引っ張られたけど、結局鼻は小さいままで。


「ううっ っぐぅ」


幼き日の思い出を脳裏に描いた瞬間、むせぶように泣き崩れた。


その日から、あまり家から出なくなり、仕事が始まってもパソコンのメールで適当に嘘をついて出なかった。


少し貯金があるので、しばらくは問題ないけど、定期的にかかってくる母親からの電話は携帯が無いから、パソコンのメールで『携帯を無くした、すぐに買う』とだけ言って済ませた。


今は誰とも関わりたくないし、母親と電話したらあたしは間違いなく泣いてしまう。


別に死にたいとは思わなかった。


けど、すごく重い嫌悪感やストレスを常に腹に感じ、女として最低な動物になった気がする。


数日は、なるべく何も考えずに、何もしない日が続いた。


眠る前に必ずあたしを犯したあいつらを思い出すようになったんだ。


最中の言葉や、断片的などうでもいい記憶に嫌悪しながら寝つきの悪い日が続いた。


数日目には、昼夜逆転するような生活になったけど、少し落ち着いたと自覚し、パソコンでインターネットをするようになった。


なるべく好きなものや、おもしろいもの、ストレスが発散できるものを探そうとしていた。


けど、ネットにあるどの事象も、今のあたしが興味を持つものは無かった。