0003 杉並 ルシエ (5/32)
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
あたしは心の中で何度も何度も何度も謝った。誰に謝ってる訳でもなくて、怖くて悲しくて、軽率だった自分に自己嫌悪して、あたしにも悪いところがあったんだと反省したんだ。
けど、どこか冷静な部分のあたしが「すぐに終わる 終わったら帰れる」って、泣いてるあたしを励ましてくれていた。
終わって、そいつの体が自分から離れても、あたしはただ「ひぃ ひぃ」と今までに出したことのない声で鳴いていた。
すると我に返ったのか、そいつはあたしを無理矢理ドアから降ろし、車を走らせて逃げた。
バッグもパンツもジーンズも、車の中。
あたしは上着とシューズと靴下だけ、下半身丸出しで山の中に取り残されたんだ。
最中よりも、そこからの記憶の方があいまいだった。覚えてるのは寒さと、透き通った夜に嗅ぐ自然の匂い。
寒くて寒くて、すごく寒くて。指先の感覚が無くなる程凍えて、鳥肌を通り越して自分は蝋燭みたいに固まって、動かなくなるとさえ思った。
呆然と山の中の道路を下り、車や人を探すよりも、とにかく家に帰りたかった。
そして途中、若い男の子が3人乗る車に声をかけられた。
「お姉さん 大丈夫?」
安心や恥ずかしさでまた泣いた。男の子たちはあたしを車に乗せ、山を下りる道にUターンしてくれた。