0009 中野 タイジュ (30/65)
中央はタバコを吸う為か、胸ポケットからタバコの頭を出すが、一瞬ためらうように取り出すのを止めて、タバコを胸ポケットにしまった。
禁煙しているのだろうか?
「俺がゼンイチを倒したら ゼンイチと君の大切な女は俺達の奴隷になる」
俺は最大限の集中力で、中央の話を聞いていた。
「万が一 俺が負けたら君の勝ち ジュリアが君の奴隷になる」
この中央という眼鏡の男がゼンイチに勝つか負けるかを、賭ける勝負という事か。
「あたしはジュリアさんを奴隷にするなんて 望んでません」
俺がそう言うと、中央は相変わらず前を見ながら答える。
「まあ それはあくまで勝敗の定義だ 今回は重要じゃない」
それにしてもこの中央という男は、よく運転しながら小難しいSCMの話ができるな。
車の先の信号はちょうど、赤信号になる。
車を停止させた中央は少し首を曲げ、後部座席の俺に顔を向けた。
「それに俺は強いよー?まず負けない」
眼鏡の銀縁(ぎんぶち)と、ほんの少しの横顔しか見えなかったが、中央の言葉と存在にはかなりの自信と説得力を感じた。
ゼンイチほどじゃないが、中央は体も大きいし格闘技をやっていたと言われれば、自然に納得できる。