0009 中野 タイジュ (19/65)

不意に、ベンチの横にある電話ボックスのガラスに映る俺が見えた。



女友達に買ってきてもらった服は、所々土で汚れ、顔の化粧もとれかけている。



けど、そこには確かに女がいた。



そうだ。俺は今女装している。



俺はすぐに、バッグから化粧道具を取り出し、化粧を直した。



友達の意見や雑誌やネットを参考にしたメイクは、男受けを意識した。



服も、冬でも薄着のオシャレは我慢のコンセプトだ。



今朝、完璧にメイクして家の洗面台で見た自分を思い出せ。



男にナンパされ、男に金を使わせた自信を思い出せ。



今の俺は、その辺の女より可愛いんだ。



俺には、俺自身の価値がある。



化粧を直し終わり、立ち上がる。



体中の土を可能な限り手で払った。黒を基調にした服で良かった。



顔に少し傷があったが、ウィッグでうまく隠せた。



ロータリーで待機するタクシーに近づくと、ドアが開き、乗り込む。



携帯の地図を見ながら、運転手にここから2つ先の駅まで行くように頼んだ。




俺は今から赤のSCMに会いに行く。




そして交渉するんだ。




ゼンイチを倒し、シヲリさんを解放してくれと。




そして代わりに




俺がそいつの奴隷になる。