0002 渋谷 サチ (9/18)

それにしてもこの客もおかしいやろ。


今 ウチが隣に着いたこいつ。ジュリアの方ばかり見ている。


「タバコ吸いすぎじゃない?」


ウチはそう言いながら、その男に火を出すと、男は一目ウチを見るだけで、黙って顔を寄せる。


こいつ。マジ何様。あ、お客様やった。


年はウチと同じくらい。つうか顔きもい。アソコだけやたらでかそう。ウチのことそっちのけで、チラチラとジュリアを見ている。挙動もきもい。


奥でジュリアを指名した男の話からすると、スロットで勝って店に来たんだろう。


来るなザコ。


人が何を話しても「あー」とか「あそー」とか。あ行で終わらせるんよ。さぞかしジュリアがいいんやね。貧乏ゆすりしちょるし。今日はウチ、機嫌悪いんだ。この卓離れたら、友達に愚痴りまくるけ。


そんなことを考えながらイライラしていると、ザコが突然口を開いて、大きめの声を出した。


「なあ ゲームしない?」


あ、助かる。ジュリアも身を乗りだして「いいよー 何のゲーム?」と言った。


「良かったら君の知ってるゲームを教えてくれよ」


「えー どうしよう」


悩んでる様子のジュリア。ウチもゲームで時間潰してくれた方が助かるから、助け船を出してやろう。


「タバコのやつは?」


「あ いーですね」


ジュリアはグラスに水を入れ、準備を始めた。ティッシュとグラスとタバコと1円玉でできる、簡単な居酒屋ゲームだ。