0008 足立 シヲリ (33/55)
「あれ?足立ちゃん犬嫌いなの?」
あたしの様子に、レイバンは心配そうに聞いてきた。
「好きっていうかさあ」
あたしは、その辺の女の子ちゃんみたいに子犬を見て「きゃわいい!きゃわいい!」と騒ぐとか、すでに通り越している。ほどに犬が好き!
「欲しくて死にそうだから 買ってくんない?」
「え?」
時が止まるレイバンに、あたしはそばかすと垂れた耳が特徴の中型犬、キャバリアキングチャールズスパニエルを指差す。
「ほら 118,000円のあの子でいいから」
「いやあ」
素のテンションで返すレイバンに、あたしは真顔で続ける。
「いや 分割でいいから」
「分割って 命を分割で買ったらダメだよ!」
おお。確かにその通りだ。
「あー!欲しい!欲しい!欲しい!」
子供のように騒ぐあたしに、レイバンは困ったように言う。
「お 俺 実家で秋田犬飼ってるから!今度会わせるよ!」
秋田犬か。秋田犬も可愛いんだよねー。けど今は秋田犬じゃない。
「秋田犬じゃないの!118,000円のキャバリアがいいの!」
「こ 今度ね!今度!」
結局犬は買ってもらえなかった。