0008 足立 シヲリ (29/55)
こうして、あたしと中野ちゃんはナンパ男に連れられ、喫茶店を出ようとした。
出入口のカウンターには、ドーナツやクッキーなどのお菓子が飾られている。
店を出る直前、中野ちゃんはショーケースの前で突然立ち止まった。
「あ ドーナツ食べたい」
「え?」
中野ちゃんは、ショーケースのドーナツを指差し、サングラスの男を見る。
「あたしドーナツ食べるの夢だったんです けどこんな夢 叶う訳ないよね?」
「えっと あの 買ってあげようか?」
サングラスの男がそう言った。
「いいのー!?ありがとう!」
中野ちゃんは満面の笑みで、サングラスにお礼を言った。
その様子を見守る、茶髪とあたし。茶髪は笑ってるけど、あたしはすげえって思った。
もう、勝負は始まってるんだ。
小悪魔だ。やっぱり中野ちゃんは小悪魔だった。
ドーナツは148円。
中野ちゃんはドーナツをほおばりながら、小声であたしに言う。
「1円単位は四捨五入しまひょ」
うわ、ドーナツ臭え。中野ちゃん、ドーナツをモフモフしながら話しかけないでよ。むしろ今食べる必要あるの?
あたしと中野ちゃんは携帯を取り出し、メール機能の所に中野と足立と入力して、お互い見せ合う。
現在の金額は
中野 150円
足立 0円
中野ちゃんがまず一歩リードだ。