0008 足立 シヲリ (10/55)
「足立さん!」
すると偶然、店から帰りがけのおっさんの店員が気付いてくれた。
男は店員に気付くと、すぐに逃げ出した。
あの箱をあたしにバッと渡して。
「大丈夫?何かされた?」
「あ 大丈夫っす」
あたしを助けてくれた壮年の店員は、執事役をやっている優しいおっさんだ。
「警察行く?」
「あー いいっす 顔分かったら店出禁にして下さい」
「うん もちろんだよ」
それから駅まで一緒に歩いてくれたが、駅に着いてあたしが友達と合流するのを確認すると、店員のおっさんはすぐに帰って行った。
「何それ?携帯買ったの?」
友達は真っ先に、あたしが手に持つ男が渡してきた箱を指差す。
「あ」
あれから持ったままだった。
「いや客の男から渡されてさあ」
手を出す友達に、あたしは男の贈り物を渡す。
「へえ SCM?何これ どこのブランド?」
「なんか奴隷ができるとかなんとか SMか何かの道具じゃん?いらないんだよねー」
友達は箱を開けて中身を見る。
「あそー じゃあ あたしが貰っちゃおー」
そういや、この子の彼氏はネクタイでこの子を縛るくらいのSだった。この子も喜んで受けてるけど。
「止めてよ 変な奴だったし精子とか付いてるかもよ」
「きも!けど新品みたいだよ」
友達は、箱の中のビニールに包まれた金具を、興味深げに指でつまんで見ていた。