0007 新宿 セイヤ (9/36)
「本当の目的は勝つことではなく なるべく引き分けにしたかった」
さっきユウガはそう言った。
SCMの説明書には、勝負の引き分けについては書かれていない。
ユウガはそれを試したかったそうだ。
アヤカが勝負後に聞いた、ユウガの話で敗北感を感じたのは、事故だったそうだ。
俺にとっては、ハッピーな事故だった。
口の中のSCMが『カチリ』と鳴った瞬間、アヤカに縛られた俺の鎖がほどけたのを感じた。
抑制されたアヤカへの怒りが一気に膨れ上がり、俺は嘔吐感を感じながら視界が真っ白になった。
気が付いた時は、店の中である事も忘れて、アヤカをグーでぶん殴ってたよ。
倒れたアヤカを、もう1発殴ろうとした時。
「よせ!」
ユウガの言葉で、俺は凍りついて殴るのを止めた。
その時に、俺の主人がアヤカからユウガに変わったことを実感したよ。
けど、それはどうでもいい。
俺はもう、アヤカの奴隷じゃなければいいんだ。
他の客に見られたのは痛かったが、店の仲間がうまくフォローしてくれて騒ぎにはならなかった。