0022 江東 キヨ (34/34)
さあ、ここから早く抜け出さないと。
「ごめん……みつけちゃった」
ドアを開けた瞬間、マリヤが立っていた。
耳には携帯電話があてられている。通話している。奴と。
「きゃっ!」
おれはマリヤを押しのけ、すぐに便所を出ようとした。
けど、出入り口の先に奴が立ってたんだ。
「おいブス、出口見張っとけ」
マリヤが「はい」と答えるなか、その男は長いスポーツバッグを抱えて、便所まで入って来た。
「電車乗って逃げたかと思ったら、女子便に入ってたとはね。いけないんだ」
テメーも男だろ、なんて言う余裕はなかった。
「なあ、教えてくれ。多重人格なんだってな。今のあんたはどっちだ? 母親のほうか? ゼロって息子か?」
「……あ、あなた誰ですか?」
「あ?」
すまんゼロ、しばらく耐えてくれ。
お前のすべての罪も罰も、母ちゃんが背負ってやる。
「ぼ、僕は……」
「ま、どっちでもいいや」
おれの嘘をさえぎり、港タキオがおもいっきりバットを振りかぶった。