0022 江東 キヨ (30/34)

おれがゼロのなかにいることは、デジャヴュのような感覚に似ている。


擬似体験による思い込みさ。


さっきまで別人になる夢を見ていて、起きたときに寝ぼけた頭で、「あれ? そういえば俺って誰だっけ?」ってなるような一時的な錯覚。


それが長く、そして確かに感じるんだ。


ゼロの意思や気持ちこそ知ることができても、表に出ることはなかった。


けど、ゼロが18歳になる直前に問題が起きた。


養護施設が近々、閉鎖されることになったんだ。


さらに、あいつはクラスメイトのサイフを盗み、見事にそれが公の下でバレちまった。


ゼロにとって、人生を狂わせるような過酷なストレスが連続して起きたんだ。


そんななかでも、あいつはひた向きに高校へ通い続けた。ギリギリの線一本で、踏ん張ったんだ。


高校卒業間近に、施設長夫婦がゼロに打ち明けたんだ。


本当の母親は火事で死んだと。


おまけに施設の閉鎖も、最悪のタイミングで切り出しやがった。


その瞬間、ゼロはすべてを思い出した。


ゼロのなかの何かが、また出てきた。


あいつの手に、再び炎が揺らめいた。