0021 千代田 マリヤ (59/85)

SNSにハマって多額の課金をした上、出会い系バリに利用して浮気を繰り返した妻。


夫はその確固たる証拠が欲しかった。


「探偵を雇ってもバレた上に逆切れされて 嫁の方が立場が上だったんだとよ」


夫婦間の空気で、その夫はかなり虐げられていたんだと感じた。


例えば小学校のクラス内でイジメが起きていたとして、それが大人から見ればどんなに下らなくても、当の子供からすれば大問題なケースがいくらでもある。ぼくも振り返れば、そんな経験たくさんしてきた。


それがクラスであったり職場であったり、そして家庭であっても同じ。


大人や他人から見れば大したことじゃなくても、当事者にとってはその立場や状況を変えることがどうしても出来ないんだ。


そして極限まで追い込まれた人間の発想は、時として奇妙な方向へ行く。


「……それでSCMを使ったんだ」


「そう 2つで600万で買ったんだと」


「ろっ……嘘でしょ!?」


さっきから何、そのバブリーな夫婦。


「知るかよ ただやたらいい家だったし その旦那も輸入カーぺット屋だか何だかで相当儲けてるみたいだったよ」


予想外の連続。信じられない話ばかりだけれど、嘘を付いてるようには思えない。ぼくは感嘆の声を漏らすだけしかできなかった。


確かにカーペットって高いやつなら1枚売れただけで、しばらく暮らしていけるって聞いたことがある。


キヨゼロはビールを一缶飲み干すと、次の缶を開けた。


「おれには意味わかんねーけど旦那が言ってたよ」


「何て?」


「革命を起こしたかった ってさ」


虐げられし立場の革命。


その夫は、その言葉を胸の内でずっと繰り返してSCMを使おうとしたんだ。