0021 千代田 マリヤ (43/85)
何度、46万円のピアスが付いたその耳をこのハサミで切り落とそうと思ったか。
直後に血で錆びたハサミが浮かぶ。この女のキレイキレイな顔が歪んで、ぼくを恐れる顔、見たい。
そんなビジョンを押し殺していたら、思わず言っちゃった。
「ぼくにはね奴隷くんがいるの」
「え?」
ぼくの言うことを何でも聞く奴隷くん。
そう言いながら思い浮かんだのは、一人称が我のメールだった。
「やだ それ面白い 写メとか無いんですかあ?」
食い付いた。
鏡越しの彼女が、初めてぼくの口元を見た。
「写メは無いけど これから来るの」
「え 見たい 超見たい」
カットが終わり、シャンプーをし出した頃にゲッコウくんがやっと来た。
やがて来た彼の貧相さには萎えたけどさ。
シャンプー中でゲッコウの姿は見られずに済んだのも束の間。
彼女が店を出る時に鉢合わせた。
小さな恥を感じさせられ、ぼくは初めて会うゲッコウが気にいらなかった。