0021 千代田 マリヤ (41/85)
無邪気に凄いこと言い出したよこの子。
「俺らもその高校にスパイを送り込むんだよ」
彼のその一言で、板橋ゲッコウを利用することになった。
そして直後に、都合良く彼の方から会いたいと言ってきたの。
ぼくの運がいいとかって言うより、江東先輩の引きの強さを感じた。
その夜はちょうど、以前知り合ったゼロくんの元カノの髪をカットする日だった。
彼女から連絡があったの。髪を切ってほしいって。
けれど、いざ改めて彼女と話をしてみたら自慢話ばかり。
コミュニケーションも仕事の一部だけれども、彼女の自慢は今までで一番最悪な客、渋谷サチの一歩手前まで来ていた。
ぼくが毛先を伸ばしている間も、彼女は鏡越しのぼくにぺちゃくちゃと自分のステータスを話すの。
美容室の客はどいつこいつもそう。
鏡越しで見ているのはぼくじゃない。美容師じゃない。
自分の話を聞いてくれる生き物か何かに、ただひたすら話を聞いて欲しいだけ。