0019 練馬 ヨシムネ (18/63)
「ひゃくろくじゅうはち クック」
「何だジジイ 何笑ってんの?いつからドMに目覚めたんだし」
否。嬉しいのよ。
孫がまた一歩、ワシ側に目覚めた。
ミナミがワシに向かって失礼で舐めた態度を取るのは、ワシに甘えている証拠。
ワシがちゃんと愛していると分かっているからこそ、ミナミはワシをおざなりに扱い、いざと言う時に甘えてくる。
18歳までの残り2年間は、そういう風に接するつもりだったけど。
今日はおじいちゃんの怖い所を見せる、いい機会かもね。
「ひゃくななじゅうご」
本気でやればいい。本気でやれば、無許可で勝負するツバキへのやましい気持ちも誤魔化せる。
「本気?いいじゃん ジジイ」
ワシは思わずメモに『本気でやれば』と書いてしまっていた。
カアンッ
ミナミはバッグから更に、バケツの形をしたカンカンを取り出し、机の上に叩き付けた。不快なゴングの音が部屋に響く。
「勝負を決めるのはクジでやる」
「ひゃくはちじゅう」
確か、あのマンションでもミナミはツバキお手製の勝負クジを行っていた。部屋に置いたままの菓子缶を疑問に思ったワシに、ツバキがそう言ってた。
今思えば、あの勝負クジを渡した事が、ミナミをジュリアちゃんにけしかけた引き金に思えるわ。
ミナミは更に、折って小さくなった紙を机の上にばら撒く。とは言え数はそんなに無い。
一目でそれが5個だと分かった。