最終日 (2/8)
私は新しい人生を生きる。
母からも兄からも離れ、全く別の私としてこれからは過ごす事になる。
七瀬 星は死んだのだ。
これからは、蓮見 星として生きていく。
母は見送りの時に泣いていて。ちょっと、いやかなりびっくりした。
私とお兄ちゃんの事も母は知っていたようで。母が私に冷たかったのは、兄を止めなくてはいけないという焦りから、私にどう接していいか分からなかったからだったみたい。
母は次第にストレスを私にぶつけるようになって更に悩んだ。兄から聞いた話、母は毎晩のように一人でこっそりと泣いていたらしい。
「ごめんね、星…」と何度も名前を呼びながら。
母は、私を嫌いだと思っていたから。だからこんなに考えていてくれたなんて… 。
逆に兄は泣いていなかった。いつかはこうなるんじゃないかと思っていた、と兄は言った。
「ちゃんと兄として、妹の幸せを願ってやりたいって今は本気で思っている」
兄は、まっすぐに私の目を見てハッキリとそう言った。嘘偽りない言葉だと、兄の笑顔を見れば分かる。
そして蓮見くんの家族は、私を迎い入れることを心から喜んでくれた。元々共働きで忙しい蓮見パパと蓮見ママは、一人暮らしは不安だから私が居た方がいいって。
洸太をよろしく頼むと逆に頼まれてしまった。
これも、全ては蓮見くんが事情を伝え、お願いしてくれたからだ。とっても感謝している。感謝しきれないくらいに。
『…それなのに、なんで…』
なんで、貴方は居ないんですか?
昴さん…。