推理~主婦~ (9/11)
「……え?」
私は混乱を隠せない。
すると夫は鞄の中から一つの包みを取り出した。
手の平に乗るサイズのそれは、ピンクの和紙のような包みに赤いリボンがついている。
「何……これ…?」
私は戸惑いながらも夫からそれを受け取った。
「開けてみて。」
夫は優しい顔で言う。
まだ震える手で包みを開けると、中からはピンク色の小瓶が出て来た。
これは
香水。
「20年前、結婚したときにあげた香水を覚えているかい?」
夫は恥ずかしそうに鼻をかく。
覚えている。
たしか『Marry me』という甘い香りのする香水だ。
私はもったいなく思って一度も使わずに棚にしまってある。
「そのときあげた香水は結婚を祝うために作られた香水なんだ。そしてそれが…」
夫は私が手に持つ香水を指差した。
「『Eternal love』この愛を永遠に。」
確かに香水の小瓶にはEternal loveと刻印が押されていた。
「会社の後輩に相談したら探してくれてね。今日は仕事を早く上がって少し遠くまで買いに行って来たんだ。」
ああ。
私は何と言う勘違いをしてしまったんだろう。
こんなにも私を思ってくれている夫を疑って、あまつさえ殺したいと思ってしまった。
私は取り返しのつかないことをしたのだ。
涙は後から後から溢れ出して私の後悔を増幅させた。
「ごめんなさい……あなた。」
声を絞り出す。
私にはそれしか言えなかった。
「いいさ。俺も会議なんて嘘ついて内緒にしたのがいけなかったね。」
夫の言葉は私の心を優しく包み込んでくれる気がした。