0001 港 タキオ (3/19)
届いた小包には手に収まるサイズの、歯の矯正器の様な月型をした金具が入っていた。
その奥には小冊子が入っている。説明書のようだ。
白紙のページをめくって3ページ目。初めに書いてある文字は。
──あなたの上の歯は
10ありますか?──
数えた事も無いが舌で数えてみる。親知らずの生えていない僕の歯は多分14本。改めて数えてみると奥歯あたりがあやふやで、正確な数がよく分からない。
次のページをめくると、同封された歯型の金具を口の中に入れる図が記されていた。上の歯の裏側にハマる様になっているようだ。
得体の知れない物を口の中に入れるなんて嫌悪感があるが、軽く水ですすいだだけのそれを僕は口に入れた。
した事はないし裏側だが、歯の矯正はこんな感じだろうか。
上の前歯の裏にハマった金具。所々が透明のゴムみたいな物で出来ていて、大抵の人の口の中にハマるようになっていた。
初めはサイズに違和感があったが、なんとなく歯の裏側でしっくりくる。
歯と歯の間、歯茎の間に心地良い鋭い痛みはあるが、喋る時や食べる時には邪魔になる様子は無い。
鏡の前で口をイーッとして見たが、金具はうまく見えない様になっている。
口の中の不慣れな器具を舌で舐めながら、説明書の続きをめくった。