0002 渋谷 サチ (2/18)
「サチ あんたなんか変な事しとらん?」
1ヶ月ぶりの母親からの電話。母はウチに突然聞いた。
「しとらんよ 何急に」
ウチは、昨日付けたばかりのスカルプをイジりながら電話する。
「今朝 また大麻をやってるっていう大学生が捕まったニュースで サチの近くだったから」
「あんな話関係ないよ ウチは大丈夫やけえ」
「そうならいいけど 怪しい所なんかに行っちゃいけんよ」
その後、30分ほどで電話を切った。
上京した時は方言がコンプッレックスで、大分直したつもりだけど、未だに感情的になる時と地元の人間と喋る時は方言が出る。
大学の為に東京に来て2年。ウチは20歳になった。
仕事は夜、キャバクラだ。
高校の時まで、周りから可愛いと言われた。結構モテた。ウチは東京に出ても、やっていける自信があるほどだった。
働いた先は都心からは離れているけど、地域で一番いい店。
軽い気持ちで始めたが、初めから順調だった。お店には怒られたけど、他の子とは違う事をアピールする為にも、ウチは髪を紅く染め肌も焼いた。
やっぱスタイルっしょ?今しかできないんだし。
そして、ウチは2ヵ月目でNo.1になった。その頃には肌を焼く事も髪の色も、店からは何も言われなくなった。
わがまま言いたきゃ偉くなれって、この事っしょ。
けどそこに奴が現れたんだ。
ジュリア。
あいつの前だと、ウチの紅と黒は霞(かす)む。
考えるだけでイッライラする。
あいつが店に来た月、ウチは1発で売り上げをぶち抜かれた。