0019 練馬 ヨシムネ (34/63)
勝負はワシが書いた、三回戦の庄屋拳。
庄屋拳とは、お座敷遊びよ。
庄屋、狐、鉄砲を模して行う、ジャンケンの様な3すくみの遊び。
庄屋が鉄砲(猟師)を雇い、鉄砲は狐を撃ち殺し、狐は庄屋を化かす。
鉄砲<庄屋<狐の順で力関係が成り立った勝負。それが庄屋拳。似た様な遊びに、藤八拳なんてのもあるけどね。
ミナミは卓の上へ上がり、正座をした。
「こうやんだろ?」
「よんひゃくさんじゅう」
この子のこういう行動的な所が大好きなのよ。
ワシもミナミに続き、卓の上へ登り、正座して彼女と向き合った。
窓のシャッターから差し込んだ光の筋の中、パリッとした緊張感が部屋を包む。
いいね。孫との勝負の背徳感。
「勝負は庄屋拳」
ミナミは背筋を伸ばし、涼しげな顔で言う。窓からの光で、カラスの濡れ羽色の髪がキラキラと輝いていた。
ああ、これ。
この子が稀に見せるこの顔。貪欲なクソガキの中に光る、美丈夫の顔。
だからワシはたまらなくこの子が好きなのよ。
「三回戦行い 二勝した者の勝ち」
「よんひゃくごじゅうに」
『 カチッ 』
ワシの承諾の意思と共に、SCMから音が鳴る。勝負開始の合図ね。