0017 江戸川 リュウオウ (14/58)

別にあのおばさんに母親として僕に優しくして欲しい訳でも、人としてしっかりして欲しい訳でも無かった。


何も考えていない様に空を舞いやがって。


僕はまだ自分が子供だと知ってる。


街路樹を沿って飛ぶ、お前も似てるな。


僕が自立するまでの残り数年でいい、ママに僕を育てて欲しかった。


ママに。


頭の中で言葉が蔓延(まんえん)する。



あの子 あなたの赤ん坊を妊娠してるの



フジコの言葉がリフレインする。


ジュリアが僕の子を妊娠?


不意に、あの蟷螂の薄汚れ、孕んだ緑が頭に浮かぶ。


法で罰せられるのはジュリア。


仮に愛があっても法律はジュリアを罰する。


グチャグチャした吐き気が、脳と喉元に押し寄せる。


今が現代ではなく、江戸とかならば全ては普通なのに。


頭の中でスレッドが乱立する。


僕は僕の生活に支障をきたすものを正したかった。


蝶々はまた、高校から道路を挟んで建つ、民家の屋根の先へ飛んでいく。


その支障が、差し支えが、ママであっても、僕はそれすらも平行に正す事を望む。