5日目 (7/12)
冷や汗が
背中や頬からつたるのが分かる。
それはきっと、この状況に対する緊張感と恐怖感のせいだ。
昴「星のお兄さん」
兄「あ?」
昴「星の嫌がることをするのはなんで?
どうしていつも星に怯えた顔をさせるの」
隣にいる私をチラリと横目で見て、昴さんは兄に向き直した。
真っ直ぐな瞳は兄しか映していない
周りにいる怖そうな男の人たちは眼中にないと言った感じだ。
「てめえ…スカした態度取ってんじゃね、ンガッ!??」
昴「うるさい。邪魔しないで」
背後から突然殴りかかろうとした男の人を、昴さんは見もしないで撃退。
ガンッと鼻のあたりを右手をグーにしてパンチ。そのパンチの威力は鼻から血をタラタラと流すほどで。う、痛そうだ。かなり痛いぞ、悶えてるし。
でも…
『昴さん!!あの、出来るだけ…』
”出来るだけ加減して”
そうじゃないと、昴さんが危険物とみなされて回収されてしまう。そんなのは絶対に嫌だ!!
兄「…なっ…、」
昴「僕に勝てないと思ったからって数で勝負しようと思ったの?
バカだね。無駄だからそんなの」
兄「うるさい!!
お前ら!こいつのことどうにかしろ!!」
「うらあああッッ」
「やっちまえええ!!!」
兄の声で
周りにいた男の人たちは一斉に昴さんめがけて突進。
兄「お前はこっちだ、ひかり」
『…ひッ!』
兄「何ビビってんだよひかり。
俺はお前のこと心配してたんだぞ?」
『……いいよ、心配とか…』
兄「お前が誰かのモノになるとか耐えらんねーからさ、俺…。
おかしくなりそうで心配だったわ」
自分の心配かよ!
もう!キモイキモイキモイ誰か消滅させてくださいこのヤンデレ野郎を!!
兄「くくッ、あいつ…いくら強くてもあの数には流石に「もう決着済んだけど」
『昴さん…!!!』
兄「は?ちょっと…まだ5分も経ってねえんだけど…」
昴「あんなに大勢居たら誰が誰だか分からないしね。
ほら、みんな勝手に殴り合ってるよ」
兄「…何だと!?」
昴さんの視線の先には
大勢で殴り合う熱い男達の戦場だった
ク◯ーズみたいだなあ(^ω^)
兄「…あんの喧嘩バカ達が!!
使えねえ!!」
怒りでワナワナと拳を震わせる兄。
そんな兄に対し、昴さんは非常に落ちついていて。そして言った。
昴「無理だよ。
どんなにたくさんの人達を連れてこようと、君は僕には勝てない」
兄「はあ!?そんな事ねえよ!!」
昴「なんなら1対1で勝負してもいいけど
どんな勝負でも、星がかかった勝負事に負ける気はさらさら無いから」
『…わっ、』
そのまま昴さんは私を包み込み
優しく抱き寄せた。
ぎゅうっ…
昴「星は大切な存在だから」
昴「いくら君が星のお兄さんでも
星が悲しい想いをするなら、僕は全力で止めるよ。
どんな事になってもね」
兄は昴さんの言葉に何も言い返せないでいた。ただ立ち尽くし、何も出来ないといった様子。
昴「…逃げるよ星」
『あっ、は、はい!』
昴さんに手を引かれ
そのまま路地から逃げ去るように走った。
『……』
あれ、
追って…こない…??
あの兄なら、絶対に追いかけてくると思ったのに!!
昴さんに威圧されたからかな…