7日目 (27/27)
母「な、何言ってるの…お兄ちゃん。
星ならここに、」
兄「だから、死んだんだって。
そいつは赤の他人。早く帰してやって」
兄はどうしても私を居ない存在にしたいらしいてゆうか死んだことにしたいらしい。えええ意味不明なんだけど、どうしたらいいの!!
母もかなり混乱している。
兄「離れた方がいいんだよ。お互いさ、 」
そう言った時の兄の表情は、いつに無く曇りのない柔らかな笑顔だった。
私は初めて見た、兄の偽りのない笑顔を。
***
七瀬 星は
今日で死にます。
***
兄「知ってたでしょ、母さん」
母「…何のことかしら」
兄「俺が、ちょっとおかしい奴だって」
母「おかしい奴?あんたは、おかしくなんかないわよ。お母さんの自慢の息子」
兄「…いやいや、」
母「たまたま、好きになった人が妹だった。それだけじゃない」
兄「母さんも大概おかしい奴なんだな…バカじゃねーの」
母「あら、私がバカなら子も子だわ」
兄「自慢の息子なんじゃねーのかよ」
ごめん。
俺がマトモな奴なら、兄としてお前に好かれていたかもしれないのに。
俺は兄としてじゃなくて、一人の男として好きになってしまった。それだけじゃなくて、俺は自分勝手で嫉妬深い人間だから。
たくさんお前を傷付けた。
一生残る傷を残してしまった。
俺、自分を抑える自信が無いんだ。
だから
この選択をもっと早くにしていれば良かったんだ。
兄「母さん、ひかりを知り合いの家に預けよう」
母「…お兄ちゃん、それは流石に無理があるんじゃないかしら?そもそも知り合いって…」
兄「父さんにって言いたいところだけど、いつ帰ってくるか分かんねーし。あの人はきまぐれだから。
ひかりを幸せにしてくれる新しい家族…あいつ自身で見つけたから。
ちょっと早いけど、嫁に出すってことで」
常識的にあり得ない事だ。
でも、異常な俺はこれくらいしかお前にしてやれない。こんなことで、罪が償えるとは思っていないけど。せめて…
兄「俺からのお願い、母さん」
深々と頭を下げて頼み込む。
母さんは難しい顔をしている。当たり前だ。
なに言ってるんだろうな俺、まじでバカじゃねーの何が嫁に出すだよ。
…まあ、
遅かれ早かれ、ひかりが嫁に行ったらこの家から居なくなるんだ。それがちょっと早まっただけじゃねーか。それだけだ。
母「…やっぱりバカなのかしらね。貴方も、私も」
兄「……」
母「…挨拶にはいかなくちゃね。
なんだかんだ言っても、私の大事な一人娘ですから」
母さんは、
ちゃんとお前の事も愛していたよ。
俺がこんなだから…母さんまで。
全部俺が悪かったんだ。
だからたくさん憎んで、恨んでくれ。
その代わり
新しい家族と幸せになってくれ、星。